PROFILE
- 鈴木 セリーナ
- 大分県出身。幼少期から英才教育を受けお嬢様として育つ。16歳の頃、親への反発心からドロップアウト。年齢を隠して、地元クラブのホステスとなる。20歳の頃、「銀座のクラブのママになりたい」と夢見て上京。当時、テレビで有名だった銀座高級クラブ「F」で働く。相手の懐に飛び込むトークと物怖じしない性格が受け、たちまち人気ホステスとなる。その後、銀座老舗クラブ「江川」に引き抜かれ、売上ナンバーワンに。
銀座ホステスを辞めてからは、主に文房具を扱う企画会社とタレントのキャスティング会社を起業。マルチクリエイティブプロデューサーとして、ビジネスの世界でも成功を収める。実業界から政界、マスコミ業界まで、様々な業界のトップクラスと親交が深いことでも知られる
- 高橋 秀作
- SerenadeTimes大人気小説『夜枕の絵本』著者であり、元週刊誌記者。現役記者時代、事件担当記者として数々の現場を歩き、多くの有名事件を取り上げ、世に排出した敏腕記者として名高い。小説家に転身後、処女作である『夜枕の絵本』が「独自の世界観に引き込まれる」と、話題をさらっている。
INTRODUCTION ─
セリーナ / 世の中には有象無象のニュースが溢れ返っています。日々私が一般企業の方々と接していて思うのは「役職レベルが上の方でもメディアリテラシーが低い方が多いなぁ」ということなんです。
高橋 / 例えば、Yahoo!ニュースを正しく活用できている人って、どのくらいいるのかなと思いますね。Yahoo!では新聞記事もネットニュースも同列に扱われ、ハイスピードで消費されていく。報道の分野以外の方と話していると時々ビックリするのですが、ニュースソースに対しての意識が低すぎるんですよね。
「ジャニーズのXくんが婚約したんだって」「それ、どこに書いてあったの?」「Yahoo!に書いてあった」。そんな会話が普通に飛び出してきます。ニュースソースを一切確認せず、表面的な文章を一方的に信じ切っているんですよ。これは怖いなぁと思いますね。私はそういう話をする人には「出典元も確認しないでニュースを見ているのかよ!」といつも説教するんですけど(笑)。彼らは全国紙もネットニュースも真実性を疑うことなく、全部同列に理解しているわけでしょう。
セリーナ / 日本では圧倒的にYahoo!ニュースを読んでいる人が多いですよね。若者が「ググる」とか言っていますけど、実際は「ヤフってる」わけです(笑)。私はYahoo!の広告が気になってしまって仕方ない。このインターフェースを見ていると、広い視野を失いそう。なんだか囲い込まれている感じがしますね。
高橋 / なるほど。
セリーナ / 多くのネットメディアはタイトルがキャッチーであれば、中身はなくても閲覧数が格段にアップするようですね。
高橋 / それにより、くだらない記事が世に量産されるループに陥っているんですよ。ときどき私はネットメディアからの執筆依頼を受けて1本5千円~1万円で原稿を書くこともあるんですが、週刊誌とは書き方自体が違うんです。普通、読み手にわかりやすいように理路整然と書こうとすると起承転結の形になるわけですけど、ネットニュースでは編集者が「とにかく前半に美味しいところを全部持ってきてくれ」と言うわけです。
「もっと前半を過激にしてくれないと誰も読みませんよ」と指示が飛んでくる。逆に言えば、後半部分はどうでもいいんだって。ネットニュースを好む読者は、基本的に長い文章を読まない。あるいは読めない層だと思うんです。ファクトや論理展開はさておき、「早く結論だけが知りたい」と。
セリーナ / ある出版社の方は「今の時代、動画ですら1分以上は見ない」と話していましたね。学力が落ちてるのかな……。
高橋 / 最大140文字のツイッターがこれだけ世間に浸透したのも、こうした背景があるのかもしれませんね。
セリーナ / しかも、その140文字すら最後まで読まず、正確に理解できていない人が多いじゃないですか。「トリニータタイソウ」の件では様々な意見を頂戴しましたが、「それ、さっき公式見解で発表しましたよね」という内容のものが多かったです。例えば、「あなたの見解を読みました。長々と書いてありますが、要するにあなたは悪くないっていう考えなのですね」とか……。でも、全体を通してしっかりと読み込めば、そういう感想にはならないわけです。「読解力がないんだなぁ」と思ってしまいましたね。中学高校の現代文のテストで「この文章の結論を述べなさい」という問題がありますが、批判してくる人たちはきっと0点の解答ばかりですよ。読解力を付けると共に、世の中に溢れるニュースから信憑性のある記事を見極める術が必要ですよね。
高橋 / 前回の対談で一般読者が考えるニュースの信憑性のランキングによると、1位は新聞、2位はテレビ、3位はネット、最下位が週刊誌でした。あれは衝撃的な結果だったなぁ。
セリーナ / 数年前、「文春砲」という言葉が生まれたじゃないですか。あの現象は「週刊誌といえども、ここまで取材ができるんだ」という意外性の裏返しだと思うんです。「週刊誌、意外とやるじゃん」という。あれが新聞だったとしたら、あそこまでの拡散力はなかったように感じます。
高橋 / 週刊誌の内部にいた人間からすると、文春が「文春砲」と言われ始めたことに少なからず違和感を抱きましたね。だって、文春は20年以上前からまるで〝諜報機関〟のような凄まじい取材力を誇っていたわけで、「いまさら文春砲って……」という感じ。20年間、文春の緻密な取材手法はずっと変わっていない。同じことを毎週続けてきて、ようやくベッキーの(不倫スクープの)おかげで世間一般に認知されたわけです。旧知の文春関係者に「最近調子いいね」と声を掛けると、「なんでそんなに騒いでいるんですか。ずっと我々は変わっていませんよ」と口を揃えますね。
セリーナ / たしかに、ベッキーのスクープは、私が週刊文春という媒体名を知るきっかけになりました。広告で言うところのアドバタイズ&オペレーションがうまくいったということでしょうね。ポイントはやはり意外性ですよ。それによって発行部数は増えたんでしょうか?
高橋 / 大して増えていないと聞いていますね。テレビで拡散された後、ネットで消費されてしまうので、実際に購買に結びつくかといったら微妙でしょうね。
セリーナ たしかに人気と認知尾は違いますもんね。ところで、文春の読者と「Serenade Times」の読者って同じ年齢層じゃないかなと思うのですが、いま一番読まれている記事はどのような分野なのでしょう?
高橋 / 週刊誌全体のキラーコンテンツというものがあって、ずばり老人モノですね。「死後の手続き」「相続特集」「がんの最先端医療」「お墓の選び方特集」など、終活に関するものが抜群に売れます。スクープを掲載しても、実際そんなに数字は左右しないのですが、老人モノをやると実売数が跳ね上がるといいます。
セリーナ / 自分自身の老後が心配で、他人に興味を持っている場合じゃないんでしょうね。
セリーナ / さて、いよいよ本題の「ニュースの読み方講座」に入りましょう。