2019.04.09

―金なし、コネなし。はじまりは1冊の会社四季報から―

元銀座No.1ホステスの飛び込み営業記録

 

鈴木セリーナ、大分県大分市出身。
10代で地元・大分のホステスとなり、20歳で上京。銀座のホステスとして働きはじめ、瞬くうちに売り上げNo.1の座を勝ち取った。
若い頃から働いていたため、学歴は当時、中卒だった。
そんな彼女は現在、キャスティング会社と文房具会社を営む経営者だ――。
ホステスからビジネスウーマンへ。
学歴もコネもなかった彼女がどうやって一流企業と仕事を共にするに至ったのか。その秘密に迫る。

 

Scene3

顔も名前も覚えていない大分のデパート社員に「Dream5」を売り込む!

「土下座コンドーム」「妊娠検査薬」そしてツバメノートとのコラボレーションがいくつか終わってすぐのこと。鈴木セリーナは地元・大分のデパート「トキハ」にいた。この日、彼女は「妖怪ウォッチ」でその後一世を風靡するアーティスト「Dream5」の売り込みに来ていたのだ。そして、見事、この日も提案は採用された―――。

 

鈴木セリーナと「Dream5」との出会いは、銀座ホステス時代に遡る。当時、別のお客さんの接待で訪れたレストランで出会った「土下座コンドーム」のイメージモデルとなった男性については前々回触れた。その男性が実は大手芸能事務所のマネージャーのA氏で、のちに「Dream5」の担当をすることになる、というところからが今回の話だ。レストランでの出会いを境に鈴木とこの芸能マネージャーは親交を深めており、何かと連絡を取り合っていた。そしてある日、A氏がアーティスト写真を持って彼女に売り込んできたのが、当時まだ売れていなかった「Dream5」だったのだ。

 

彼女は「Dream5」を見て、一目で気に入った。しかし当時の「Dream5」にはナショナルクライアントといわれる有名企業が起用するほどの実力はなかった。そこで鈴木がまず考えたのは、地元でホステスをしていた時に知り合った大分のデパート「トキハ」の社員に連絡をすること。だが、この時点で鈴木の大分ホステス時代は10年以上前。昔の名刺を取り出し連絡をすることにしたが、もちろん、自分ですら相手の顔と名前が一致していない。それでも鈴木は「Dream5」に確かな可能性を感じており、期待を込めて、一本の電話をかけたのだった。

 

「以前都町(※大分の繁華街)のSというクラブで接客させていただいた、鈴木セリーナと申します。覚えていらっしゃいませんよね……?今回突然お電話したのは、今、どうしても応援したいと思っている子たちがいて、御社で何かできないかなと思い、ご連絡をしたのです。10年ほど前に、大分でホステスをしていた際、いただいたお名刺を見て失礼を承知でお電話しております」

 

もちろん、返事は「覚えんし(=覚えていない)」。
だが、鈴木の熱弁が届いたのか、「Dream5」の話をしたら興味を持って乗ってくれた。そうしてすぐにアーティスト写真を送り、何かイベントがあったらさせてほしい旨を伝えると、早々にキャスティングが決まり、仕事をするに至ったのだった。

 

ちなみに、彼女が飛び込み営業の時に欠かさなかったことを一つ、ここで紹介する。それは、営業に行く時は“相手を打ち負かしにいこう”とするのではなく、“仲間を探しに行こう”と思って臨むこと。彼女には今回、「Dream5」を応援したいという強い気持ちがあった。そのため「トキハ」にも同じ気持ちで応援する仲間になってほしいと思って口説きに行った、というわけだ。この営業スタイルは今回に限らず続いていくことになるが、「Dream5」との出会いをきっかけに、その後大きく花開く。これこそがイトーヨーカドーとの長い付き合いを生む原点だったとは、まだ鈴木本人も知らない――。

 

(続)

 

 

 

取材・文/まちおこし