2019.04.30

―金なし、コネなし。はじまりは1冊の会社四季報から―

元銀座No.1ホステスの飛び込み営業記録

 

鈴木セリーナ、大分県大分市出身。
10代で地元・大分のホステスとなり、20歳で上京。銀座のホステスとして働きはじめ、瞬くうちに売り上げNo.1の座を勝ち取った。
若い頃から働いていたため、学歴は当時、中卒だった。
そんな彼女は現在、キャスティング会社と文房具会社を営む経営者だ――。
ホステスからビジネスウーマンへ。
学歴もコネもなかった彼女がどうやって一流企業と仕事を共にするに至ったのか。その秘密に迫る。

 

Scene5

大手小売りチェーン・イトーヨーカドーと仕事をするまでの道のり
vol.2 「Dream5」のイトーヨーカドーイベントを訪れる

日本では知らない人はいない、ナショナルチェーン・イトーヨーカドー。鈴木がこの大企業と仕事をするようになったのは、2013年のことだ。一部週刊誌の報道によると、トントン拍子で進んだように書かれている。けれどそれは誤解だ、とここで強く断言しておきたい。なぜなら、鈴木は“自分の作ったノートをイトーヨーカドーで売る”というビジネスウーマンとしての目標に到達するため、一つ一つ、コツコツ丁寧に努力をしてきた結果なのだから――。

 

「Dream5」のイベントがきっかけで、当時のイトーヨーカドー常務・B氏と知り合いになった鈴木。けれど、この時鈴木は同時に別の企画も進行していた。それは「Dream5」と警視庁を繋げて仕事をさせよう、という企画であった。というのも、「Dream5」と警視庁を結び付けることによって彼女たちの持つクリーンなイメージをよりPRし、ゆくゆくはイトーヨーカドーのCMにキャスティングしたい、と思っていたからである。

 

しかし、ナショナルクライアントと呼ばれる大手小売りチェーンのCMに起用されるのは、そう容易いことではない。そこで鈴木が考えたのが、まず「Dream5」に官公庁の仕事をさせること。そうすることで彼女たちにクリーンなイメージをつけ、イトーヨーカドーに提案したいと考えていたのだった(※注:警視庁の仕事を受注する際には、三親等内に反社会組織関係がいないかなどの厳しい調査がある。つまり、警視庁と仕事をする=グレーなことは何もない、ということの証明なのだ)。

 

元々「Dream5」というグループは、「天才てれびくんMAX」というNHKの番組から派生した5人組のダンス&ボーカルユニット。公共放送番組の出身ということもあってか真面目な印象だったことに加え、10代の遊びたい盛りにもかかわらず全員黒髪でひたむきに働いているところも、鈴木はとても気に入っていた。その非常にいいイメージを活かせる場所がどこかにないか、と常に考えていたのである。そこで思いついたのが、「ピーポくんと敬礼している一日署長を、彼女たちにさせられないか」ということだった。

 

もちろん、警視庁にツテはない。今回も、表の門から連絡をすることに決めた。大代表を調べて連絡すると、一言目は「はい、警視庁です。事件ですか、事故ですか」と聞かれてしまった(本当の話だそうだ)。鈴木はひるまず、「非常に真面目で誠実な10代のグループのキャスティングをしているのだが、ピーポくんと仕事をさせてもらうにはどのようにしたらいいか」という用件を伝えた。そうすると、交通総務課という部署に繋いでもらうことができた。そしてここでもいつものように“アーティスト写真を持ってご説明に上がりたい”という話をし、アポイントをとることに成功。商談後の2013年春。警視庁が一年で一番大きく広報活動をする「春の交通安全運動」イメージキャラクターとして、「Dream5」の起用が決定した。

 

鈴木はいつも言う。「アポイントをとる時から、もう一緒にやる企画のローンチイメージは見えている」と。この時、提案から商談成立までどういう流れをとったのか彼女に聞いてみると、たった一言、

 

「一週間に一度、自分の提案が警視庁内でどのように進行しているのか確認をしていた」
とのことだった。

 

時間を戻すと、最初にアポイントがとれて警視庁を訪れた時、担当者からいい反応は得られたものの、一度部内で相談しますと持ち帰られたそうだ。一週間後、「先日はありがとうございました。その後いかがでしょうか」と様子をうかがい、その後もたびたび連絡をしていたという。
実は今回も警視庁という大きな組織を相手に最初からスムーズにいったわけではなく、「彼女たちに非常にいいイメージはあるけれど、部内で知っている人が少なくて」と一度渋られていたのだ。けれど電話をかけるたび、「このたびテレビアニメ『たまごっち! 』のオープニングテーマを担当することが決まって」など、「Dream5」に決まった別の仕事の話をした。そういった電話を重ねて、少しずつコミュニケーションを深めていった結果、警視庁が「Dream5」を起用する、ということになったのだ……。

 

“提案をした=伝わっていると思うのは大きな間違いです。
友達の近況を聞くように、相手に忘れられないように
細やかに連絡をするのは当たり前のことじゃないでしょうか”

 

――この日、鈴木が最後につぶやいたこれこそが、彼女の人間関係の作り方、そして飛び込み営業が成功する理由なのだろう。

 

(続)

 

 

 

取材・文/まちおこし