2019.05.28

SPECIAL TALKS

Vol.2

オジサンは憎むべき相手?

元銀座No.1ホステスで、現在は実業家として様々な事業を展開している鈴木セリーナと、ファッション動画マガジン「MINE(マイン)」で編集長を務める秦亜衣梨による、対談連載の第二弾。今回は、鈴木セリーナの著書「おじ説」が出版された経緯や、「MINE(マイン)」が目指すメディアとしての在り方を、語ってもらいました。
文=島野美穂(清談社)写真=関大介(世紀工房)

プロフィール

秦 亜衣梨
大学時代に始めたライターアシスタントの経験を活かして、フリーのライターとして本格的に活動開始。大学卒業後、女性誌『GLAMOROUS』(講談社)でフリーのエディターとして独立した後、女性誌『GINGER』(幻冬舎)の創刊メンバーとして参加。本誌以外に、モデル平子理沙のスタイルブック『Girls Girls Girls』や、菜々緒ポーズを生み出した女優、菜々緒の写真集『1028_24 菜々緒 超絶美脚写真集』、『菜々緒スタイルブック』の編集、執筆を担当。その後、CCCメディアハウスの女性誌『FIGARO japon』へ。アーティスト松任谷由実の連載を担当。2017年11月よりファッション動画マガジン『MINE(マイン)』の編集長を務める。
鈴木 セリーナ
大分県出身。幼少期から英才教育を受けお嬢様として育つ。16歳の頃、親への反発心からドロップアウト。年齢を隠して、地元クラブのホステスとなる。20歳の頃、「銀座のクラブのママになりたい」と夢見て上京。当時、テレビで有名だった銀座高級クラブ「F」で働く。相手の懐に飛び込むトークと物怖じしない性格が受け、たちまち人気ホステスとなる。その後、銀座老舗クラブ「江川」に引き抜かれ、売上ナンバーワンに。銀座ホステスを辞めてからは、主に文房具を扱う企画会社とタレントのキャスティング会社を起業。マルチクリエイティブプロデューサーとして、ビジネスの世界でも成功を収める。実業界から政界、マスコミ業界まで、様々な業界のトップクラスと親交が深いことでも知られる。

オジサンは憎むべき相手?

前回は、お二人を繋いだ『おじ説』について語ってもらいました。そもそも、セリーナさんが本を出版したきっかけはなんだったのでしょうか?

実は私、本を出そうと思ってたわけじゃないんです。出版のきっかけは、あるトラブルでした。

トラブル?

はい。詳しくはお話しできないのですが、そのトラブルの関係者として、私、週刊誌に書かれたことがあるんですよ。顔は目だけ隠した写真で、仮名になっていたけど、見る人が見たら「鈴木セリーナだ」とわかる内容でした。でも、書いてあることは作り話もいいところ。
だけど、メディアの力って、本当にすごいです。取引先の人たちの多くは、記事をすっかり信じてしまって、私の周りからサーッといなくなってしまったんです。

露骨ですね。

順調だった仕事が、あっという間になくなり、大打撃でした。しかも、そんな状態の中で、また別の週刊誌が取材に来ると言うんですよ。でも、不思議ですよね。周りの人たちからは「絶対に会わないほうがいい」と言われていたんですが、私と当時、私の会社に在籍していた重本ことりだけは、「この記者には会ったほうがいい」という直感が働いたんです。

直感というのは?

当時、ある有名人のスキャンダルをすっぱ抜き、その名を世間に轟かせた週刊誌の記者とは、どういう人なんだろうという、単純な興味がまずありました。
その週刊誌はそれまで、芸能人のゴシップを積極的に取り上げてこなかったんですよね。そんな中で、新しいことをやってのけた人は、私や重本と、感覚が近いような気がしたんです。私たちはいつも、やる・やらないの判断を、面白いか否かで決めています。その記者の方も、ひょっとして似たような判断基準を持っている方なのかなと。

なるほど。

そして実際にお会いして、色々お話しをしました。週刊誌に載っていたのは、たしかに私だけど、事実は違うということや、ちゃんと取材してものを書いてほしいとか、本当に正直にお話ししたんです。ほかにも、私が元ホステスで今会社を経営していることや、過去にある有名人と付き合っていたこととかも。
そうしたらその記者に「今お聞きした話を記事にすることもできるんですけど、きっと小さな扱いにしかならない。それだったら別のお仕事を一緒にさせてもらえませんか?」と言われて。

事実関係を取材に来たのに、セリーナさん自身に興味が出てきたわけですね。

でも、今の私には、できる仕事なんてないですよと言ったんです。人も去ってしまった後だし、もう最悪な状態ですと。そう言う私に、「鈴木さんだったら3ヵ月で復帰できます。あなたは面白い。僕にできることをさせてください。本を出しませんか?」と提案してくださったんです。

本当すごいです(笑)。

それで、その週刊誌記者が出版社にプレゼンをしてくれて、本を書くことになり、あれよあれよという間に出版することになりました。もちろん自費出版ではなく、印税をいただいて。それが、『おじ説』なんです。

そうやって生まれた本が、秦さんとのご縁を繋いだんですね。そして、『おじ説』の動画企画がスタートしたと。

はい。『MINE』での『おじ説』企画が始まって間もない頃、『MINE』の「Future is MINE」というイベントに呼んでいただいたのですが、それもとても印象に残っています。
加藤ミリヤさんが出版した『28』という本を朗読する会だったのですが、お客様の女性たちがみんな泣き出しちゃったんですよ。

そうなんですか?

はい。「自分たちの課題をしっかり見つめよう」という趣旨で、一人ひとりにインタビューしていくと、みんな話してるうちに、泣けてきちゃうみたいで。

  • 普段、心に秘めていることを打ち明けることによって、気持ちが溢れちゃったんですよね。それを見て私、『MINE』って、すごいと思ったんですよ。発信するだけではなく、読者である女性、一人ひとりに寄り添っているから。
  • メディアである以上、発信して届ける相手がいるわけで、その相手にちゃんと届いているかというのは常に考えています。日々、仕事で疲れたなとか、明日会社に行きたくないなとか、恋愛しておしゃれしたいとか、みんな色々な欲求を持っているじゃないですか。そんな感情に寄り添えるメディアでありたいと思っているんですよね。

今どきの女性は、SNSがある分、欲望や感情と向き合う機会が、昔よりも増えていると思うんです。特に、Instagramは顕著です。普通の女の子たちが、ブランドものをズラッと並べた写真をアップしてるのを見て、びっくりしました。“いいところを見せたい、見せなきゃ”という欲求を持つ子たちが、すごく多い。

Instagramに載せるためだけに、ブランド品をレンタルすると聞いたことがあります。

本当ですか? 私の会社で、今度、ブランド品のレンタル事業もやろうと思っているから、借りてもらえるかもしれませんね(笑)。私、服を買っても、数回しか着ないんですよ。それで、ドレスのレンタル業をしている方から、「セリーナさん、ECサイト立ち上げるなら、レンタル業もやってみたら?」とアドバイスをいただいたんです。ということで、今準備中です。

セリーナさんのその、ビジネスになりそうな種を見つけるスピード感に毎回驚かされます。普段から意識されているんですか? 

私って友達いないんですよ。秦さんはご存じだと思うんですけど。

(笑)。

いつも仕事仲間といるので、必然的に仕事の話になるじゃないですか。だから常にブレスト(ブレインストーミングの略:米国大手広告代理店の副社長アレックス・F・オズボーン氏が考案したとされる会議方式の一つ。あるテーマについて、複数の人が自由奔放に意見を出し合い、新しいアイデアを導き出す手法)してる感じです。楽しいか、楽しくないか。お金になるか、ならないかを話している。それだけなんですよね。

その思考が、素晴らしいと思います。

ありがとうございます。私、16歳でグレてから、嫌なことをしなくなったんです。自分のやりたいことだけ、やろうと決めました。
ただ、今の若い子は、そもそも「やりたいことがない」と悩んでいる子がすごく多いんですよ。

そうなんですか?

はい。就活中の大学生に向けて講演をさせていただく機会も多く、実際に現場でそういった声を聞きます。「やりたくないことをやらない」以前の問題ですよね。
そういう子たちには、興味のない企業に履歴書を送るのは止めなさいと言います。あんたたちを面接しなきゃいけないオジサンの気持ちも考えなさいと。向こうも迷惑するからって。

たしかに、そうですね(笑)。

オジサン側の視点を持つセリーナさんと、女性視点のメディアを作っている秦さん。きっとお二人の絶妙なバランス感覚が合わさって、新たな面白い企画が生み出されるのですね。

そうなんです。でも真逆なようでいて、セリーナさんと私の目指すところって、一致してるんです。
というのも、『おじ説』動画の主役は、もちろん女性なんですが、裏テーマには、「オジサンもそんなに悪くないよ」というメッセージがあります。これは書籍版の『おじ説』でセリーナさんが繰り返し訴えているところでもあります。

おっしゃる通りです。

オジサンを嫌いになって、ネガティブな気持ちになるって、結局自分が損してるだけですから。動画の最後に、毎回ちょっとしたアドバイスを入れているのは、そこまで憎むべき相手じゃないということを伝えるためでもあります。

セリーナ オジサンと若い女性たちの距離が縮まれば、もっとストレスなくみんな過ごせるはずなんですよね。

(第3回に続く)