2019.06.04

SPECIAL TALKS

Vol.1

メディアの裏側

大人気連載「夜枕の絵本」の作者であり、元週刊紙記者の高橋秀作と、メディアを熟知し、操作する女、鈴木セリーナによる注目の対談。


PROFILE

鈴木 セリーナ
大分県出身。幼少期から英才教育を受けお嬢様として育つ。16歳の頃、親への反発心からドロップアウト。年齢を隠して、地元クラブのホステスとなる。20歳の頃、「銀座のクラブのママになりたい」と夢見て上京。当時、テレビで有名だった銀座高級クラブ「F」で働く。相手の懐に飛び込むトークと物怖じしない性格が受け、たちまち人気ホステスとなる。その後、銀座老舗クラブ「江川」に引き抜かれ、売上ナンバーワンに。
銀座ホステスを辞めてからは、主に文房具を扱う企画会社とタレントのキャスティング会社を起業。マルチクリエイティブプロデューサーとして、ビジネスの世界でも成功を収める。実業界から政界、マスコミ業界まで、様々な業界のトップクラスと親交が深いことでも知られる
高橋 秀作
SerenadeTimes大人気小説『夜枕の絵本』著者であり、元週刊誌記者。
現役記者時代、事件担当記者として数々の現場を歩き、多くの有名事件を取り上げ、世に排出した敏腕記者として名高い。
小説家に転身後、処女作である『夜枕の絵本』が「独自の世界観に引き込まれる」と、話題をさらっている。

SPECIAL TALKS / Vol.1

メディアの裏側

元週刊誌記者・高橋秀作さんには、世の中で起きた様々な事件をもとに小説「夜枕の絵本」を書いていただいていますが、事件現場を歩いてみて、そこにはおそらく〝負〟の要素しかないわけじゃないですか。そういう現場でどうやって取材を進めていくんですか?

事件取材って、基本的には取材対象者と目線を合わせる作業なんですよ。例えば、15年2月に川崎中1殺害事件が起こりましたね。あの取材現場は壮絶でした。被害者と加害者の知人友人がことごとく地元のヤンキーで、知り合いのカメラマンなんて被害少年の葬儀でヤンキーにぶん殴られていましたし。そういうとき彼らにどうやって取材するかというと、とことん一緒に遊ぶことなんですよ。

遊ぶって、具体的に何をするんですか?

基本的には「大人なんてクソ野郎だ」と思っている連中だし、そんなクソ野郎たちが俺らのシマを荒らしに来たと思っている。話しかけた瞬間、「おいこら」の世界ですわ。私は最初、彼らに一切事件のことを聞かなかったんですよ。「遊びに行くぞ」って一言。
「カラオケでもボーリングでも連れて行ってやるから付き合え」って言ってさ。
「服がほしい」というからドン・キホーテに行ってジャージを買ってあげたり、「ゲーセン行きたい」って言うから一緒に行って100円玉を握らせてあげたり。こいつら、中学生ですからね。
1週間後、そのヤンキーの集団に「お前さぁ、良い奴だな」って言われて、だんだん話してくれるようになったんですよ。
そのうち「お前、記者なんだろう? 俺たちの話も聞いてくれよ。いまテレビでも嘘ばっかり報じてるじゃん」って。それで彼らの本音の部分を聞き出せたんです。まずは一緒に泣いて笑って、汗と涙を流すことが大事ですよ。

相手と同じフィールドに立つことは、コミュニケーションの基本ですもんね。
先日、品川プリンスホテルのブッフェで50代の歯科医らしき男性がデートクラブで知り合ったような若い女性とデートをしていたんです。聞き耳を立てていたら、その男性は「政治家の後援会に入っていてね。歯科医師会がね」って、自分のフィールドの話ばっかりしているんですよ。
あんな若い子が興味あるわけないじゃないですか。彼女は「すごーい!」とか言っているんだけど、死んだ魚の眼をしていたわ。

歯医者が歯医者の話したらクソつまらないじゃないですか。生真面目な歯医者がめちゃくちゃエッチな話を始めたら「おぉ」ってなりますけどね。まずは相手に話を合わせろよって思いますね。

その通りです(笑)。ところで、取材のときは相手に感情移入するんですか?

記事にする際には一歩引いた視点が必要なので、そこまで感情移入するのは適切ではないですね。
でも、感情移入しすぎちゃう記者は意外と多い。例えば、冤罪を唱えている被疑者に食い込みすぎて活動家みたいになってしまう記者がいます。裁判で不利益な根拠が出てきても「いや、あの人は俺だけに真実を教えてくれている。絶対に冤罪だ」って一歩も譲らない。
本音を引き出すには人間関係を詰めるしかないんだけど、その距離感は大事ですよ。

わかりますねぇ。半分は感情移入しないと相手をコントロールできない。自分の気持ちをどうマネジメントするかというのが非常に大事になってくると思いますね。ヤンキー少年と1週間も一緒にいたときは情が移りましたか?

そりゃ週刊誌記者だって人間だから情が移りますよ。ヤンキーは素直で可愛いから大好きですよ(笑)。

取材が終わってからはどうするんですか? 

あの子たちのことが心配で時々会ってましたよ。

それは凄い。私も記者という職種の方々をたくさん知っていますけど、その一件が終わったら関係を遮断する人が多い。私は彼らを〝やり捨て記者〟って呼んでいるんだけど(笑)。ネタが欲しいときは寄ってくるけど、物事が終わればスーッと引いていく。
高橋さんは週刊誌記者を17~8年やっていたそうですけど、そのモチベーションって何だったんですか?

人に対する興味でしょうね。週刊誌記者をやっていると、とんでもないビックリ人間と次々に知り合えるんですよ。エンコ詰め(指詰め)しすぎて両手がドラえもんみたいになっているのに愛や平和を唱えているゴリゴリのヤクザとか。しかも、そういう人がハードゲイだったりすると、もうぶっ倒れるくらい面白くて興味が尽きないじゃないですか。そういう人には会うたびに「やっぱり人間って面白いなぁ」と思う。記者って〝慣れてはいけない仕事〟だと思うんですよ。いちいち驚きながら取材をしなければいけない。人への興味がなくなって、物事に驚かなくなったら引退のときですわ。いちいち驚いていないと良い原稿は書けないですからね。

(第2回に続く)