2019.06.18

SPECIAL TALKS

Vol.3

メディアの裏側 ③

大人気連載「夜枕の絵本」の作者であり、元週刊紙記者の高橋秀作と、メディアを熟知し、操作する女、鈴木セリーナによる注目の対談。


PROFILE

鈴木 セリーナ
大分県出身。幼少期から英才教育を受けお嬢様として育つ。16歳の頃、親への反発心からドロップアウト。年齢を隠して、地元クラブのホステスとなる。20歳の頃、「銀座のクラブのママになりたい」と夢見て上京。当時、テレビで有名だった銀座高級クラブ「F」で働く。相手の懐に飛び込むトークと物怖じしない性格が受け、たちまち人気ホステスとなる。その後、銀座老舗クラブ「江川」に引き抜かれ、売上ナンバーワンに。
銀座ホステスを辞めてからは、主に文房具を扱う企画会社とタレントのキャスティング会社を起業。マルチクリエイティブプロデューサーとして、ビジネスの世界でも成功を収める。実業界から政界、マスコミ業界まで、様々な業界のトップクラスと親交が深いことでも知られる
高橋 秀作
SerenadeTimes大人気小説『夜枕の絵本』著者であり、元週刊誌記者。
現役記者時代、事件担当記者として数々の現場を歩き、多くの有名事件を取り上げ、世に排出した敏腕記者として名高い。
小説家に転身後、処女作である『夜枕の絵本』が「独自の世界観に引き込まれる」と、話題をさらっている。

SPECIAL TALKS / Vol.3

メディアの裏側

30代男女を中心に「新聞・テレビ・週刊誌・ネットの信用性のヒエラルキー」についても聞いてみました。ある女性は「テレビ、新聞の順番。週刊誌とネットは同じ」という意見。ある男性は「1位は新聞。2位はテレビ。3位はネット。4位は週刊誌」という意見でした。

ちょっと待って。えっと、これはめちゃくちゃ衝撃的な意見なんですけど。ネットの記事よりも週刊誌のほうが信用性が低いと……。ネットの記事なんて、ひとつも取材しないで書いているものばかりですよ。長年にわたって週刊誌記者をやっていると、原稿を読んだときに「これは取材してないな」とか「この証言、ちょっと捏造っぽいわ」とか、瞬時にわかるんですよ。特に、証言者のカギ括弧を読んだときに記事のクオリティーがわかってしまう。事件取材の原稿はディティールに命が宿るわけだし、良い記事は読んだときに映像が浮かんでくるんです。私はネットニュースの記事で「これは光景が浮かぶ良記事だな」と思ったことは一度もないけど。皆さん、意外とメディアリテラシーが乏しかったりするのかもしれませんね。

それ、わかります! 何が可哀想かって、名の知れた企業の幹部クラスの方々のメディアリテラシーが低いことなんですよ。先日の「トリニータイソウ」の一件について言えば、偏ったネット記事を真に受けて「スポンサーを下りたい」と言ってくる企業がいましたし。ノイジーマイノリティと言うんですけど、実際ネット上で意見している人はかなり少ない。大企業がごく少数のネット民の意見を聞き、それによって対応を変えるということが起きている事実に衝撃を受けましたね。

本当にそうですわ。ヤフコメで批判的なコメントがあっただけでビビってしまう大企業の幹部クラスって多いですからね。

決定権のあるおじさんたちにメディアリテラシーがない。もっと冷静になってほしいですね。

新聞だって信用度が1位と言いますけど、毎日のように誤報の「お詫び」が載っていますよ。「新聞が書いているから真実だ」という時代でもないでしょう。

ちなみに、ネット記事を信用している芸能人って意外と多いんですよ。信じているからこそ、自分自身が標的になる記事を書かれるのを恐れていますね。要は振り回されているんです。

ニュースの当事者ですら信じてしまっているなんて悲惨ですね。多くのネット記事は食えないフリーライターが1本3~5千円で書いているわけですが、真実性よりも〝いかにバズるか〟を考えている。衝撃的なタイトルを付けるだけ付けて、中身は何もない。読むだけ時間の無駄ですわ。

高橋さん、「ニュースの読み方講座」をやりましょうよ。

やりましょう! これは教育をしないと駄目ですね。週刊誌の名誉のために1つ言っていいですか。たしかにクソみたいな週刊誌は多いですが、やはり「週刊文春」と「週刊新潮」の取材力はずば抜けていますよ。彼らは莫大な時間とお金をかけて丹念に取材をしています。

週刊誌の中にもヒエラルキーがあるんですね。女性週刊誌はどうですか?

うーん、信用性が高いとは言えませんね。例えば、ある男性芸能人が恋人にDVを働いていたとします。「文春」や「新潮」では、その被害者とされる恋人にすべてを語ってもらわないと1行も書けない。恋人を口説き落とし、LINEのやり取りを入手して、入念に証拠収集をするわけですね。記事にする際は、情報源が恋人本人であることが分からないように「知人」「友人」の証言という体裁を取るでしょう。LINEの文面は紙面には出せないけど、重要な証拠なので裁判対策として大切に保管しておきます。一方で、女性週刊誌は、恋人の知人からフワッとした証言を聞いただけで記事にしてしまうでしょうね。裏の取り方が全然違うんですよ。

なるほど。一行を書くために物凄い努力をしていると聞いたこともありますね。

できる記者ほど裏取りにめちゃくちゃ時間をかけます。以前、「芸能人Aがドラッグをやっている」という情報が入ったことがあり、1ヵ月以上、行動確認をしたことがありました。その結果、Aと頻繁に接触している怪しげな男に辿り付いたんですよ。こっちはテンションが上がって、シャブの売人だって思うじゃない。今度はその男の行動をずーっと確認して、売人であるという裏取り作業をしたんですね。1ヵ月後、ついに真実が分かった。その男はバイアグラの売人だったんですよ。当然、1行にも記事にはならなかったけど、編集長は「全然いいよ。誤報を免れたじゃないか。それも大切な取材なんだから」って言ってた。1ヵ月張り込んで1行にもならないことがあるんですよ。「週刊誌なんてデタラメばっかりだ」って人は言うけど、こんな涙ぐましい努力でページが出来ているんですよ。

それは凄い。その裏取り作業は、裁判対策でもあるわけですよね。週刊誌って、すぐに提訴されるイメージがあるじゃないですか。

そうそう。週刊誌のスキャンダル記事って名誉毀損の壁との戦いなんです。当事者から名誉毀損で提訴された際、「いや、これは事実ですよね」と突き返す材料がないと駄目。少なくとも「文春」や「新潮」の記者は、常に裁判で負けないための証拠集めをしています。例えば、政治家Bの疑惑を元秘書が紙面で告発するという記事があったとします。記事掲載後、政治家Bが週刊誌を提訴した場合、裁判の過程で味方であるはずの告発者がビビって「あの話は嘘でした」と法廷で証言を覆してしまう可能性だってあるわけです。だからこそ、証言ベースには頼らず、客観的物証を入手してから記事を出すようにしています。裁判で負けないというのは、ひとつのプライドですね。負けちゃうとね、やっぱり業界で噂になって格好悪いし(笑)。

なるほど、週刊誌記者としてのプライドがかかっている。それは絶対負けられない戦いですね。

(第4回に続く)