2019.07.09

SPECIAL TALKS

Vol.2

情報にお金をかけるということ

元銀座No.1ホステスで、現在は実業家として様々な事業を展開している鈴木セリーナと、プロインタビュアーの吉田豪による対談連載。第2回目は、大分トリニータの公式ソングは、なぜ炎上したのかを、お二人が徹底分析。そこで浮かび上がってきたのは、“情報を受け取る側”の問題点。その意味とは……?

文=島野美穂(清談社)
写真=宗廣暁美

PROFILE

吉田豪
プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。
鈴木セリーナ
大分県出身。幼少期から英才教育を受けお嬢様として育つ。16歳の頃、親への反発心からドロップアウト。年齢を隠して、地元クラブのホステスとなる。20歳の頃、「銀座のクラブのママになりたい」と夢見て上京。当時、テレビで有名だった銀座高級クラブ「F」で働く。相手の懐に飛び込むトークと物怖じしない性格が受け、たちまち人気ホステスとなる。その後、銀座老舗クラブ「江川」に引き抜かれ、売上ナンバーワンに。銀座ホステスを辞めてからは、主に文房具を扱う企画会社とタレントのキャスティング会社を起業。マルチクリエイティブプロデューサーとして、ビジネスの世界でも成功を収める。実業界から政界、マスコミ業界まで、様々な業界のトップクラスと親交が深いことでも知られる。

情報にお金をかけるということ

SPECIAL TALKS / Vol.2

前回、重本が炎上した件についてお話しましたが、実は私も今年、大分トリニータというサッカーのクラブチームの公式ソングを発表した際に、“炎上”といってニュースになったんですよ。書き込まれた実数にすると、とても少ない人数なので、全然“炎上”じゃないと思うんですけどね。

その話をセリーナさんから聞いて、ボクもサッカーについては全然知識がないからすぐに調べましたよ。2曲制作したうちの、『トリニータイソウ』のほうが話題になったんですよね。曲自体は、重本さんがDream5時代に歌ってた『ようかい体操第一』を彷彿とさせるような感じでした。

そうです。同じ人が歌っているから、同じように聞こえますよね(笑)。そういうところにもツッコミを入れてほしかったです。
それから、サッカーをやっていない子供でも、この曲だけはなぜか耳から離れない、大人になっても記憶に残っている……という曲になるように願いを込めて作ったのが、『トリニータイソウ』です。

芸人のあべこうじさんと作詞をされたんですよね。

はい。私は、もともと作詞家としても活動しているんですけど、スポーツチームの応援ソングはこれまで作ったことがなかったんです。そこで、言葉の魔術師であるあべさんにご協力をいただきました。
ところが、完成した歌を披露した途端、サポーターたちから意見が送られてきました……というのが、今回の経緯です。

要するに、問題になったのは「けちらせケツ出せプリプリ、うんちかますぜブリブリ」という部分の歌詞ですよね。うんちやお尻などのフレーズは、子供には鉄板でウケるんでしょうけど、大人からは評判が良くなくて、下品すぎるって話になって。

ただ、批判の声を聞いたときに感じたのは、もしかしたら、冒頭の「けちらせケツ出せ~」だけを聞いて評価してるんじゃないか、ということです。話題になるのは大変ありがたいですが、私としては、歌詞を全部聞いてもらってから判断してほしかったですね。

話題になったあと、すぐに、セリーナさんの会社(株式会社apple ribbon)と大分トリニータ(大分フットボールクラブ)が、それぞれ公式声明を発表しました。

話題になってすぐに、色々なメディアからお問い合わせをいただきました。
大分フットボールクラブは、当初、この騒動に静観する姿勢でした。でも、それだと悪い噂だけが勝手に広まり、それがニュースになってしまうのが今の時代です。
そうならないためにも、早い段階で公式声明を発表すべきだと、私から大分フットボールクラブに提案したんです。

発表した公式声明についての反響はいかがでしたか?

「言い訳している」など、さらに批判の声があがりました……。どこをどう読んだら、言い訳になるのかと困ってしまいました。
ちゃんと全体を読み込んでいたら「言い訳」と思わないんじゃないでしょうか…。文章を全部読むということをまずサポーターたちにはお願いしたいです。

最近、炎上するケースで多いのがまさにそれで、みんな全文を読まないんですよね。「切り取りだ! 全文を読めば真意は伝わるはず!」って言ってて、全文読んだらもっとひどいケースもあるんですけど(笑)。でも、基本的には誰かが恣意的にまとめた文章を読んで、それだけで判断します。 最近、俳優の佐藤浩市さんが炎上した件もそうですよね。

何があったんですか?

あるインタビュー記事で佐藤さんが自身が主演する映画について語った内容が、安倍首相を揶揄してるということでネットでものすごく叩かれたんです。ところが、問題になった記事を読んでみると、決して揶揄しているような内容ではないし、その映画での役作りも全然そういうものじゃなかった。結局、最初に言い出した誰かの言葉を鵜呑みにした人たちが、全文を読むことなく勝手に怒ってるパターンがすごく多いんです。

炎上した際のベストな対応について、吉田さんはどう思われますか?

ボクは、今は2パターンしかないと思っています。「過剰に謝る」か「完全無視」です。過剰に謝るとは、そこまで謝る? と、見ている人が引くくらい謝り倒すことです。たとえば芸能人だったら、引退しますとか、最初にものすごく大きなことを言わないと火は消えません。最近だと原田龍二さんがそんな感じでしたよね。そこを読み間違えて、中途半端な謝り方をすると、余計に炎上します。

「完全無視」というのはどういうことでしょうか?

変に触れるくらいなら、いっそのことすべて無視するということです。何を言われても徹底的に無視して反応しない。なかったことにする。炎上に詳しい専門家の人が言ってたんですけど、下手に触れるよりも無視したほうが、今のネット社会にはいいんだそうです。ボク自身は、誤解が広まるぐらいならと、つい細かく説明したくなっちゃう性格なんですけどね。

豪さんが編集者だった頃とは、メディアの在り方もかなり変わっていると思います。それについてはどう思われますか?

ボクはネットがまだ普及していないパソコン通信の黎明期から仕事をしてるので、今は本当にいい時代になったと思います。昔は、タレント名鑑とか映画の名鑑とか資料を山ほど持っていないとできない仕事でしたから。その点、今はなんでもスマホで調べらるので便利ですよね。ただその分、簡単に調べられるようになってメディアリテラシーが高くなるかと思いきや、そうではなかった。すぐに調べられる環境にありながら、多くの人が調べなくなっちゃったんです。

調べなくなったというのは、私も同感です。
というのも、今回の「トリニータイソウ」の一件を、サッカー総合サイトが、サポーターが怒っていることや、公式声明を発表したことなどを、記事にしていました。
ただ、私にも大分フットボールクラブにも、一度も取材依頼がなかったんです。それなのに、「トリニータの公式ソングに批判」……など、刺激的な見出しが使われていたんですよね。

それはボクもまだ見てないんですけど、ネットニュースはPV数を稼ぐため、刺激的なタイトルにしがちなんですよね。読んでみたら、タイトルと中身が全然違うということがよくあります。

そうなんです。なので、信頼を置けそうなメディアにはこちらからお電話して、取材していただく運びとなりました。
そのときの取材で、公式ソングを制作した経緯を細かくお話しました。
https://web.gekisaka.jp/news/detail/?277849-277849-fl
また、ネット上では、「トリニータの予算を無駄遣いしている」などとも言われているのですが、楽曲の制作経費については、すべて私の会社で負担しております。そういった誤解についても、記事の中で説明しています。

メディアも、ネットに転がっているコメントを使って記事にしちゃいますからね。良くも悪くも、パソコンの前から動かないで記事が書ける時代になったんですよ。

吉田さん流の情報の集め方があれば、教えてください。

新刊も古本も含めて本を買うとか、資料を買うとか、現場に足を運んで生の声を拾うとか、情報にはお金と時間をかけます。情報を取り扱う人間として当たり前のことなんですけど、やっていない人も多いから差別化できてるんだと思います。結局、ボクが生き残っているのは、そういうことを続けてきたからなんでしょうね。

セリーナさんはどのように情報を集めていますか?

私はニュースは見ません。というのも、ニュースの当事者になっている方とお会いする機会がよくあるのですが、報じられている人物像とはまるで違うという経験が結構あったんです。豪さんの「現場に足を運んで生の声を拾うと同じかもしれませんね」。なので、間違っているかもしれない情報を、わざわざ自分から仕入れる必要はないなと思って。会社を経営しているのに、情報を仕入れなくて大変じゃないですかとよく聞かれますが、私は、全然問題ありません。

(第3回に続く)